偏見差別相談事例

患者さんやご家族から寄せられた実際の相談事例を紹介しています。

出産後、子供に母子感染防止のためのワクチンを打ったが、陽性になってしまった。
B型肝炎のことも伝えた上で保育園入園が内定したが、その後自宅待機を命ぜられた。

保育園
ご相談者: B型肝炎の子どもの母親
A1回答1

2016年10月以後、0歳児全員を対象としたB型肝炎ワクチンの接種の制度が始まりました。対象となる2016年4月1日以降にお生まれのお子さんはB型肝炎のワクチンの接種を受けているので、B型肝炎感染の心配はありません。

2016年3月以前にお生まれのお子さんは、B型肝炎のワクチンを投与されていない方がほとんどですが、保育園や学校が適切な対応を取ることで、感染を予防するようになっています。保育施設のガイドラインは作成されており、それに沿って感染対策をおこなうことになっています。保育園や学校の対応で困っておられるようであれば、肝疾患相談支援センターに電話で相談してみてください。

メモ:B型ワクチンの効果
B型肝炎ワクチンを接種された方でワクチンへの反応があった場合には、その後15年間は感染予防効果が続くと言われています。(米国CDCのレポートより)

更に深く知りたい方に
元患者A

これは保育園の事例です。B型肝炎のお母さんからです。「出産後,子どもに母子感染防止のためのワクチンを打ったが,陽性になってしまった。B型肝炎のことも伝えたうえで,保育園入園が内定したが,その後自宅待機を命ぜられた」というご相談です。私たちは,お子さんの状態によっては周りのお子さんに感染させてしまう可能性もあるというお話をしましたが,これについても主治医の先生に相談して,一筆書いていただくということをお話ししました。実はこれは少し前の事例です。2016年10月からユニバーサルワクチン,すべての赤ちゃんに対してB型肝炎ワクチンの定期接種が始まりました。その後生まれたお子さんはワクチンを打っておられるので,こういった相談は減ってきています。

司会

医療従事者B先生,幼児の感染について,ガイドラインではどうですか。

医療従事者B

先ほどご説明しましたように保育施設に勤務されている方のためのガイドラインをつくりました。実はこのときに全国の保育施設にアンケート調査をしていまして,アンケート調査には500~600施設が答えてくれまして,どれくらいの施設で患者さんがいるのかということを調査しました。それから推定されることは,私たちは0.05%未満ぐらいではないかと思っていました。今お話にあるように定期接種が2016年10月から始まりました。対象になる2016年4月以降に生まれたお子さんはワクチンを打たれているのでB型肝炎に対する免疫を持っているのでこういったことは少なくなっていると思います。この事例に関して述べると,保育園入園に内定したが,自宅待機ということですが,私も実際にこういったことで相談を受けたことがあります。最終的に入園したお子さんも自宅待機を命じられています。なぜかといいますと,保育施設に勤務している方,あるいはこの施設にB型肝炎の人がいるということになると感染者探しが始まってしまう。そういったことは避けなければいけない。保育施設の方で園児さんを含めて勤務されている方への話し合いの機会が何回も持たれて,3か月ほどそのお子さんは待たされて,そのうえで入園されています。本来であればどんなお子さんであっても入れなければいけないわけですし,病児保育をやっていらっしゃるところもあります。どこでもきちんと対応をしなければいけないわけですが,その準備ができているところは非常に少ないのです。

母子感染防止のためにワクチンを打ったけれどもお子さんが感染してしまったという場合ですが,数は少ないですがあります。先ほど私は導入前の感染率が0.05%未満だろうという話をしましたが,本当にごくごくわずかな人が感染して生まれてくるということで,施設の方はまったく知識もなければ経験もありません。したがって受け入れる施設とは専門家が入ったなかで話し合いをしていくということになると思います。保育施設というのは特殊なところで,お子さん同士が接触している時間が非常に長い。当然お子さんと職員が接している時間が長い。あとは保育施設に入る人が増えている。私たちがこういったお子さんの保護者の方にお聞きするのは,噛みつく癖がありますかとか,引っ掻いたりする癖がありますかということです。医療従事者A先生が先ほどいわれるように基本的には感染性のある体液が傷から入るということが,感染が成立する条件で,噛みつく癖がある,引っかく癖がある,あるいは怪我をすることもあるわけです。そういった意味で保育施設というのは普通の状況とは違って,感染のリスクは高い場所だと思います。そういうことをお聞きして,お母さんにもわかっていただかなければいけない。お母さんには傷のあるときには必ず傷を覆って園に行かせてくださいということをお願いしますし,園の先生方にも登園された段階でそういったことが問題ないか確認して保育に入ってくださいということをお願いします。十分な注意を払えば感染の機会も少ないですので,そういった注意は必要だと思います。

司会

元患者Cさんに相談する方でそういう方はいますか。

元患者C

保育園じゃなく小学一年生の方なのですが,例えば,ピアニカをほかのお子さんと違う色にする,歯磨きをほかのお子さんと一緒にしない,トイレを使用したら除菌シートで便器を拭くなどいくつかの約束事を守って通学なさっています。担当の小児科の先生も医療従事者B先生のパンフレットを紹介されてこういうふうだから大丈夫ですとおっしゃったのですが,「100%じゃないでしょ」とおっしゃるそうです。それで学校側が求めるようになさっているとのことでした。子どもを守るのが教育者だと思うのです。感染者のことももっとわかってもらいたいと思います。

医療従事者B

そうですね。おっしゃっていただいたように保育施設のガイドラインのなかには当然おもちゃの殺菌の問題だとか,歯磨きの問題などのことは書いてあるのですね。歯ブラシに関してはその子専用のものを使うのは当たり前なので,それが間違いなく使われればあり得ないことなので,別に色を変えなくても名前を書いておけばなんの問題もない話です。ピアニカの問題に関しては終わったあとにちゃんとよく水で洗ってくださいということを書いてあります。そういったことを遵守していれば,口のなかに傷がなければ感染することはあり得ないことです。仮にその子がピアニカで吹いたものを次の子がそのまま使っても問題ないわけですが,水で洗ってくださいということはいっています。

国の委託を受けてつくらせていただいたガイドラインのなかで,こうしてくださいということを申し上げていて,それを基本的に守っていただければ感染はないということで私たちはガイドラインをつくっています。100%ではないかもしれませんが,保育や教育にあたる側が十分に気をつければ100%といってもよいと思います。学校がそれを100%守ることができないから責任逃れに使っているのではないか。内心忸怩たる思いがあります。

元患者A

医療従事者B先生のガイドラインを使って,職域で説明されたB型肝炎の男性の相談を受けました。会社の人は「これ全部読んだけど,100%じゃないでしょ」「だから辞めていただきたい」といわれたとのことです。

医療従事者B

患者さんたちも精一杯そういうことがないように懸命の努力をなさっていて,本当に現場が守っていただければ感染は絶対にあり得ない状況なのですね。ガイドラインとしてつくられたものは実行する側の一般の方が守っていただければ基本的に感染はないのでぜひご理解いただきたいと思います。

スピーカー紹介
八橋 弘先生
八橋 弘先生

国立病院機構長崎医療センター 副院長。肝臓内科が専門。「ソーシャルメディア等を活用した肝炎ウイルス感染者の偏見差別の解消を目指した研究」の研究班代表。

四柳 宏先生
四柳 宏先生

東京大学医科学研究所 教授。元は消化器内科が専門であったが、現在は感染症という切り口から肝炎を診ている。

米澤 敦子氏 (司会)
米澤 敦子氏 (司会)

東京肝臓友の会 事務局長。東京肝臓友の会では,日々電話相談窓口を設けて患者,家族の方から電話相談を受けており、今回の事例もその相談の一部です。

中島 康之先生
中島 康之先生

全国 B 型肝炎訴訟大阪弁護団弁護士。弁護団弁護士として主に肝炎患者さんの支援などを担当。

梁井 朱美氏
梁井 朱美氏

全国 B 型肝炎訴訟九州原告団。現在慢性肝炎を患いながらも,抗ウイルス薬でウイルスをコントロールしながら活動。

及川 綾子氏
及川 綾子氏

薬害肝炎全国原告団。東京肝臓友の会で電話相談を手伝っている。

浅井 文和氏 (司会)
浅井 文和氏 (司会)

日本医学ジャーナリスト協会会長、元朝日新聞編集委員。ジャーナリストとして肝炎の記事を数多く執筆。

是永 匡紹先生
是永 匡紹先生

国立国際医療研究センター・肝炎情報センター 肝疾患研修室長。消化器・肝臓内科が専門。

磯田 広史先生
磯田 広史先生

佐賀大学医学部附属病院・肝疾患センター 助教。肝臓が専門。普段は「なんでも相談窓口」を担当している相談員も兼務。

このサイトは「ソーシャルメディア等を活用した肝炎ウイルス感染者の偏見差別の解消を目指した研究」の研究班により運営されています