偏見差別相談事例

患者さんやご家族から寄せられた実際の相談事例を紹介しています。

「どんな小さな傷があるかわからないので、お風呂は一番最後に入ってもらう」と言われ傷つき、その後デイサービスを受けるのをやめた。

介護施設 (2)
ご相談者: C型肝炎の患者さん
A1回答1

B型肝炎でもC型肝炎でもお風呂で感染することはありません。この場合、お風呂の順番を一番最後に回すことは不適切な対応です。

メモ:ウイルスを含んだ血液や体液が浴槽の中に入ったとしても、水で薄められるので感染成立することはありません。感染が成立する為には、ある一定量以上のウイルス量が必要となる為に、プールやお風呂を利用することで、B型肝炎やC型肝炎が感染することはありません。

更に深く知りたい方に
元患者A

C型肝炎の方です。「どんな小さな傷があるかわからないので,お風呂は最後に入ってもらうといわれ傷つき,その後デイサービスを受けるのをやめた」という相談です。これは80代後半の方です。C型肝炎で治療を受けていない,ウイルスがまだある方です。まず私たちはウイルスを排除する薬があるということをお話ししました。施設の方からの相談だったので,医療従事者B先生が以前つくられた高齢者施設向けのガイドブックをお送りしました。高齢であっても治療は受けられるので是非勧めてほしいという話をしました。

司会

医療従事者B先生のつくられたガイドラインというのはどういうものでしょうか。

医療従事者B

厚生労働省の方から特に感染が問題になるであろう高齢者施設と保育施設の方に対して感染に関するガイドラインをつくってほしいという要望をいただいて,研究班としてつくったものです。ほかに前提となるような一般生活者の方のガイドラインをつくらせていただいて,その三つのガイドラインは肝炎情報センターのホームページにも載っていますし,厚生労働省のホームページにも載っています。このなかで今お話のあった高齢者施設でのガイドラインというものがあるわけですが,Q&Aをたくさんつくりました。Q&Aのなかにこれとまったくほぼ同じような入浴介助のときの注意点ということを触れさせていただいています。そのなかでは入浴していただく前に入所者の方が体に傷がないかどうかをみていただいて,それは入所者自身の健康の問題もありますし,出血をしていればそこに直接触れれば感染の可能性がゼロではないですから,傷はちゃんと処置をしてください。そのうえで入浴をしていただくことにはまったくなんの問題もないということですし,そもそも入浴という段階で血液自体も浴槽のなかで非常に薄められてしまうので感染性はないということを書かせていただきました。

医療従事者A

私も入浴することで感染することは医学的にはないと断言できます。ウイルスが仮に血液のなかにあって,かつお風呂のお湯のなかにあったとしても希釈されますので感染性の観点からはありえない。感染が成立するためには,ある程度まとまった量のウイルスが体のなかに入らない限り感染は成立しませんので,あり得ないと思います。ただ,一般の方の多くは,患者さんの血液がお風呂とか,プールの水のなかに存在するだけで,想像の世界でしょうけれど,体のなかに入って感染するものだと思っている方は結構多いのだろうと思います。そこが問題なのではないかと思います。日常生活のなかでB型肝炎,C型肝炎は感染しないということを一般の方々に広く理解していただきたいと思いました。

元患者C

ここではC型肝炎の事例として上がっていますけれど,B型も大丈夫なのだろうか,どうなんでしょう? そこが不安です。

医療従事者A

B型肝炎とC型肝炎とで患者さんのウイルスの量を比較すると10~100倍ぐらいB型肝炎の方で多い時があります。ウイルス量と感染性とは相関関係はありますが,B型肝炎で最もウイルス量が多い方でもお風呂とか,プールでうつることは理論的にはないといい切れると思います。

医療従事者B

そのとおりです。あとは大量出血というのは女性の月経の話になると思いますが,そういうときはタンポンを入れるなど対応されると思いますし,基本的にお入りにならないですよね。B型肝炎の方であってもプール,お風呂で感染することはあり得ないと思います。

元患者B

C型肝炎の患者は高齢者が多くて,電話相談では介護施設で嫌な対応をされたという方からのお電話が結構あります。それまではもう歳だから治療する気がなかったけれど,嫌な思いをして初めて治療をしなくちゃと思ったというのです。医療従事者B先生がつくられたガイドラインがそういう介護施設にきちんと利用されるような形になってほしいと思います。

元患者A

もう一つは,C型肝炎は薬でウイルスを排除することが今は簡単にできますが,実は専門医のなかでも80歳以上や,90歳になるとなかなか積極的に治療を勧めない先生がいらっしゃいます。先生方のお考えはいろいろあると思いますが,高齢でもウイルスを排除すればこういうことも起きなくなるので,是非専門医の先生には治療を勧めていただきたいと思います。

司会

抗ウイルス薬治療で年齢上限という設定はあるのでしょうか。

医療従事者A

ガイドラインにもありません。ただ,高齢者に治療することに抵抗があって,年齢を理由に紹介しないという先生はおられます。医療費の問題もあるのだろうと思いますが,本人が治療を希望しない場合は治療を勧める必要はないと思いますが,ご高齢の方でもご本人が治したいとか,家族が治してほしいと希望されれば当然治療を受ける権利はあるだろうと思います。現実問題としては高齢者に対する治療に反対される先生が多いなあと感じています。

司会

高齢の方だから副作用がでやすいとか,弊害とかはありますか。

医療従事者A

今は薬の性能が非常によくなりましたので,高齢だからということで治療ができないということはないですね。私の患者さんの最高齢は92歳の方です。もともとお元気な方なのですが,ウイルスが消えてからは,さらにお元気になられて100歳まで十分元気に過ごされそうです。年齢だけで治療適応を決めてはいけないと思います。

司会

医療従事者D先生,国でもC型肝炎治療の推進は国策としてやっていると思います。そこでは特に年齢で制限はないわけですよね。

医療従事者D

年齢制限はございません。C型肝炎の治療は薬価が高額ということがありますけれど,現在は自己負担が1月あたり1~2万円で治療が受けられるように国と都道府県が補助をする制度がありますので,どんどん治療を受けていただきたいと思います。

司会

治療を受けたいという方は80歳でも90歳でも受けられるようにしていただきたいですね。

元患者A

医療従事者D先生が事例をお持ちですよね。

医療従事者D

はい。この患者さんは今92歳になられたと思います。C型肝炎の方で,肝機能は正常で肝臓の硬さもほとんどありませんでしたので,おそらく緊急性はあまりありません。私に紹介があったときには本人も家族も治療にあまり前向きではなかったのですが,これから年齢が上がっていくことによって,本人も支えている家族も体力が低下したり状況が変わったりしてきて,場合によっては施設を利用する必要もでてくると思います。C型肝炎に感染していることが弊害になった事例もあるので,こういったことも含めて抗ウイルス薬治療のお話をしています。付き添っておられるご家族の方が,そういうことだったら治療した方がいいのではないかと考えが変わってこられました。高齢者の場合は,本人というよりも,ご家族が「もう治療はしなくていいです」といわれることが多いです。ご本人だけではなくご家族にも一緒にお話をするということが重要だと思います。

元患者A

そうですね。いずれ施設に入ることを前提とすると治療が必要ですね。

医療従事者D

5~10年経ったときにどうなるかという話までしっかりすると,考え方が変わる方もいらっしゃいますね。

元患者C

感染のことで,汗とか涙でも感染するという話をよく聞くのですね。患者は血液を注意しておけばいいと思っていました。ここは大丈夫なんだという正確なところを知りたいです。

医療従事者B

大原則としてC型肝炎患者さんの体液に感染力があるウイルスがでていることは基本的にありません。少なくとも今日の話にでてくるいろいろな状況のところでは,C型肝炎の患者さんはまったく問題がないとお考えください。では,B型肝炎の患者さんはどうかというと,主にHBe抗原陽性のウイルス量が多い方,その方の体液,汗,涙,尿,唾液,そういったもののなかに感染力のあるウイルスがでることはあります。したがって核酸アナログ製剤を飲まれている人の場合は基本的に体液にはウイルスはでてこないということになります。体液にウイルスが出てくるのはほとんどの場合はHBe抗原陽性,おそらく核酸アナログ製剤が入っていない状態の人だけだと思います。

医療従事者A

ウイルス量と感染性には相関関係があります。C型肝炎のウイルス量ぐらいであれば日常生活では感染は成立しない。B型肝炎もウイルス量が少なければ日常生活では感染は成立しない。医療従事者B先生がいわれたようにB型肝炎のウイルスの量が非常に多い方の場合は汗とか涙とかにウイルスそのものは存在する可能性がある。ただ,感染が成立するためには,別の人の体のなかに,ある程度まとまったウイルス量が確実に入らなければいけないわけで,日常生活でいえば針刺しですとか,あとは濃厚な皮膚接触。格闘技とかでの感染事例はありますが,そういうのでない限り,日常生活では普通はない。ただ,論文に紹介されているように,涙でB型肝炎が感染する報告は実験上の話であって,ウイルスの多い方に実験に協力していただき,あえて泣いていただて貯めた涙を注射器に入れてマウスに注射したら感染が成立したという話です。涙を拭いたハンカチを借りたら感染したというような話はないので,日常生活ではまずないのではないでしょうか。

司会

ありがとうございます。

スピーカー紹介
八橋 弘先生
八橋 弘先生

国立病院機構長崎医療センター 副院長。肝臓内科が専門。「ソーシャルメディア等を活用した肝炎ウイルス感染者の偏見差別の解消を目指した研究」の研究班代表。

四柳 宏先生
四柳 宏先生

東京大学医科学研究所 教授。元は消化器内科が専門であったが、現在は感染症という切り口から肝炎を診ている。

米澤 敦子氏 (司会)
米澤 敦子氏 (司会)

東京肝臓友の会 事務局長。東京肝臓友の会では,日々電話相談窓口を設けて患者,家族の方から電話相談を受けており、今回の事例もその相談の一部です。

中島 康之先生
中島 康之先生

全国 B 型肝炎訴訟大阪弁護団弁護士。弁護団弁護士として主に肝炎患者さんの支援などを担当。

梁井 朱美氏
梁井 朱美氏

全国 B 型肝炎訴訟九州原告団。現在慢性肝炎を患いながらも,抗ウイルス薬でウイルスをコントロールしながら活動。

及川 綾子氏
及川 綾子氏

薬害肝炎全国原告団。東京肝臓友の会で電話相談を手伝っている。

浅井 文和氏 (司会)
浅井 文和氏 (司会)

日本医学ジャーナリスト協会会長、元朝日新聞編集委員。ジャーナリストとして肝炎の記事を数多く執筆。

是永 匡紹先生
是永 匡紹先生

国立国際医療研究センター・肝炎情報センター 肝疾患研修室長。消化器・肝臓内科が専門。

磯田 広史先生
磯田 広史先生

佐賀大学医学部附属病院・肝疾患センター 助教。肝臓が専門。普段は「なんでも相談窓口」を担当している相談員も兼務。

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