偏見差別相談事例

患者さんやご家族から寄せられた
実際の相談事例を紹介しています。

看護学校で看護師を目指している。
実習の病院が受け入れを拒否する可能性もあると学校に言われた。
B型肝炎だと看護師になれないのか。

就職
ご相談者: B型肝炎の女性
A1回答1

B型肝炎に持続感染しているということが理由で看護師になれないということは、法律上ありません。B型肝炎の方で看護師、医師、検査技師、放射線科技師、薬剤師などの医療従事者として働いてる方は沢山おられます。またB型肝炎に感染していることを理由に就職に制限をかけることは違法行為であり法律的にも許されません。実習の病院が受け入れを拒否する可能性がある場合の対応は、本来は学生が実習をおこなえるように学校サイドが調整すべきことです。学校の対応で困っておられるようであれば、肝疾患相談支援センターに電話で相談してみてください。

更に深く知りたい方に
司会

事例②は就職についての相談例です。B型肝炎の女性。「看護学校で看護師を目指しています。実習の病院が受け入れを拒否する可能性もあると学校にいわれました。B型肝炎だと看護師になれないのでしょうか」。そういうご相談です。

元患者A

これは実は医療従事者A先生に質問をしていて,回答をいただいています。こういうご相談は看護師さんだけでなく,検査技師さんや医療関係に進みたいというご本人やお母様からあります。このような相談は,私たちとしてはまず,法的に訴えたいのかうかがいますが,ほとんどがそうではなく,このような実態を知ってほしいという内容です。看護師さんということで,医療従事者A先生に伺ったところ,国公立の施設ではあり得ないが,民間だとわかりませんとのことでした。

医療従事者A

これは電話をいただいて,今どきそんなことがあるのかなと思いました。私の知り合いのなかでもB型肝炎の医師も看護師もいますので,いわゆる肝炎患者だと医者になれないとか,看護師になれないという人は私の周辺ではいませんでした。そんなことがあるのかなとちょっとびっくりしたというか,ああそうなのかと思った次第です。でもいろいろな話を聞くと,今20歳代のB型肝炎の方は本当に少なくなりました。昔はそれなりに,50人に1人はいるのが普通だった。今は1,000人に1人とかその程度の頻度にまで減少しているので,学校側もどう扱っていいのか,前例がないので困っておられるのではないかと思いました。

私のB型肝炎患者さんの息子さんもB型肝炎患者で医療系の学校に行っていて実習をさせてよいのか学校が困って,実習をしてもいいという診断書を書いてくださいと依頼されたことがあります。診断書を書くのはいいのですが,これに応じて書くのもちょっと変だなと。本来必要ないものを証明しなければいけないということで,こういう問題は現実問題として実際にあるのだなと思った次第です。

司会

元患者Cさん,B型肝炎の人でこういうふうなことは感じておられるのでしょうか。

元患者C

看護師さんのほかに歯科衛生士さんとかも同じですね。私は,学校側は「ダメかもしれませんよ」ではなくて,学生を集めて教育をするのであったら,「肝炎の患者だって受け入れるような病院はここと,ここと,ここがありますよ」ぐらいの情報を寄せて発信してもらいたいなと思います。

弁護士

一般企業であれば,入社のときに本人の同意なしにウイルス検査をするというのは完全に違法なのですけれど,医療機関の場合は実習に行く前にB型肝炎の場合はワクチンを打つと思いますね。そのために抗体価を測ったりとかされると思います。そうすると申告しなくてもわかってしまう。例えばアメリカだったら,CDCのガイドラインでこうすべきというのがあると思いますが,日本ではどういうように対応すべきかというのが,特に医療従事者を養成するところではないですね。そこはそういう方向でアメリカの基準に準拠するなり方向性を明確に打ち出していただけると学校の方も対応しやすいのではないかと思います。

医療従事者C

私たちが学生のときに,B型肝炎の抗原検査測定を実習で行いました。そのときに「B型肝炎陽性の人がいますが…」と先生が仰せでした。実習前に大学から確認があったかもしれませんし,ご本人の申告かもしれません。もちろん,誰が陽性であったかを私は知りません。B型肝炎だから医学部に入れないとか,看護師になれないことはないと思います。

元患者C

肝炎患者として不安のなかで生きてきて,学校なり,就職先から駄目だよといわれたときに,対処する知識を持っている人は少ないです。弁護士先生もおっしゃるように感染症を持っている患者もちゃんと働けるんだという,そういうガイドラインを国でつくってもらいたいと思います。

司会

学校側の対応というのが,さっき弁護士さんがおっしゃるような対応ができればいいですけれど,まだまだできてないというのが現状だと思います。

医療従事者B

実際に医療従事者A先生にご相談がいった事例と同じようなご相談が私のところにもきます。結構まだいらっしゃるのだろうと思います。患者さんたち,この場合は学生さんですが,聞かれてほしくないことを聞かれるかもしれない。採血や同級生同士で実習をするときに注意しなければいけないことがあるかもしれない。何か困ったことがあったときには言ってほしい,何かあればこちらから学校の先生にお話をします。私たちも看護学校の実習でどの程度の危険性を伴う感染の可能性がある実習が存在するのかということが十分わかっていないところもありますので,もし,学校での実習に関する悩みを持つ方がいらっしゃったならば,それこそ患者会を通してでも結構ですし,われわれのところに直接でも結構ですから,どんなときにいわれた,あるいは自分はどんなことが心配だ,というようなことをお聞かせいただければ,学校としての対応を決めるようなガイドラインを将来つくることになったときには役立つと思いますので,それは是非お願いしたいと思います。

元患者A

医療従事者B先生にお聞きしたいのですが,実際に解決に至ったことというのはありますか。

医療従事者B

私の事例はその人が学校に話してくださいましたので,実際には学校などに直接いわなくてはいけないということはなかったですね。まだ若い学生さんで,無症候性キャリアの方で治療に入っていなくて,ウイルスの量が多い人ですけれども,ですからリスクのある行為をご本人が相談しているという感じですね。 

医療従事者A

この相談事例に関して,私が一番伝えたいことは,今の若いウイルス肝炎の方で。今から仕事しようか学校に入ろうかという時に,こういうことで職業の選択が制限されるべきではないし,それは不当なことなのだと自信を持っていただきたいと思っています。ただ,現実問題として,それが上手くいかない,できない社会が残されていることも理解したうえで,われわれや主治医の先生,相談センターの方々に相談していただいて,個々の困った事例を一つ一つ解決していくことが大切ではないかと思います。学校の方もどうしていいかわからないということであれば,それもご相談いただきたいと思います。肝炎を理由として職業が制限されるということは,あってはいけないということは,お伝えしたいと思いますね。

司会

ありがとうございます。

スピーカー紹介
八橋 弘先生
八橋 弘先生

国立病院機構長崎医療センター 院長。肝臓内科が専門。「様々な生活の場における肝炎ウイルス感染者の人権への望ましい配慮に関する研究」の研究班代表。

四柳 宏先生
四柳 宏先生

東京大学医科学研究所 教授。元は消化器内科が専門であったが、現在は感染症という切り口から肝炎を診ている。

米澤 敦子氏 (司会)
米澤 敦子氏 (司会)

東京肝臓友の会 事務局長。東京肝臓友の会では,日々電話相談窓口を設けて患者,家族の方から電話相談を受けており、今回の事例もその相談の一部です。

中島 康之先生
中島 康之先生

全国 B 型肝炎訴訟大阪弁護団弁護士。弁護団弁護士として主に肝炎患者さんの支援などを担当。

梁井 朱美氏
梁井 朱美氏

全国 B 型肝炎訴訟九州原告団。現在慢性肝炎を患いながらも,抗ウイルス薬でウイルスをコントロールしながら活動。

及川 綾子氏
及川 綾子氏

薬害肝炎全国原告団。東京肝臓友の会で電話相談を手伝っている。

浅井 文和氏 (司会)
浅井 文和氏 (司会)

日本医学ジャーナリスト協会会長、元朝日新聞編集委員。ジャーナリストとして肝炎の記事を数多く執筆。

是永 匡紹先生
是永 匡紹先生

国立国際医療研究センター・肝炎情報センター 肝疾患研修室長。消化器・肝臓内科が専門。

磯田 広史先生
磯田 広史先生

佐賀大学医学部附属病院・肝疾患センター 助教。肝臓が専門。普段は「なんでも相談窓口」を担当している相談員も兼務。

このサイトは「様々な生活の場における肝炎ウイルス感染者の人権への望ましい配慮に関する研究」の研究班により運営されています