偏見差別相談事例

患者さんやご家族から寄せられた
実際の相談事例を紹介しています。

B型肝炎と診断され、肝臓の数値が悪いから核酸アナログという治療薬を服用するように言われた。とりあえずしばらく飲めば数値は落ち着くと言わたので少し安心したが、『必ず忘れずに飲んで、勝手に止めると悪化する』と言われた。次回の診察は3か月後。診察の最後に『人に感染させないように気をつけてね』と言われた言葉が頭から離れない。感染? 私の病気は人にうつす病気? 今まで通りの生活をして本当に大丈夫なのかな。現場の仕事で怪我することもあるし、もし周りの人にうつしちゃったらどうしよう。感染について何も詳しい説明がなかったので不安でいっぱい。

医療機関
ご相談者: B型肝炎の患者さん

このテーマについて、様々な立場の有識者が討論されている内容をご覧いただけます。スピーカーの発言の行間から、このテーマに根差す深い課題を共に感じて頂ければ幸いです。

司会

ありがとうございます。お医者さんから感染しないようにというふうな言われた事例ですが、B型肝炎やC型肝炎はウイルス性の病気なので、感染症ですけども、会場に来られている方で、自分の病気が分かった時に、それが感染症だっていうふうに分かってた方ってどれぐらいおられます? あんまりおられないということなんですよね。ありがとうございます。パネリストの方でC型肝炎、B型肝炎というふうに診断を受けたときに、その病気が感染症だっていうことがお分かりでしたか。

元患者A

私は最初に感染症だと言われたので、わかりましたけれど、じゃあ感染症といってもどうやったら感染するのか、させないのか、という説明は一切なかったので、私もその後ネットで調べまくったりしました。

司会

元患者Bさんと元患者Cさんはいかがですか。

元患者B

私は全く知らなかったです。自分がC型肝炎だと言われたときに、本を見たりして感染する病気なんだっていうことがわかりました。先生に「先生、本当に感染する病気なんですか」って診察の時に聞いた覚えがあります。

元患者C

妊娠中の血液検査でB型肝炎に感染しているとわかりました。産婦人科の先生から、普通の生活をしてたら人には感染しませんと聞きました。ただ、感染症だということは、聞いてます。それで、血液で感染するのならお産の時子供に感染させるのではと、それがとても心配だったということがありました。

司会

ありがとうございます。逆に医療者側からその病気が感染症だということを伝えることがあるんでしょうか?

医療従事者A

私は、患者さんに対し、病気の原因はB型またはC型肝炎のウイルス感染症であると最初に伝えています。更に、ウイルス感染症には急性肝炎で終わる人と慢性化する人がおり、患者さんには「慢性化した状態(キャリア状態)」にあるということを説明しています。

司会

医療従事者B先生はいかがでしょうか?

医療従事者B

はい。私もお話します。患者さんたちはB型肝炎にしてもC型肝炎にしてもいろいろな状況で診断されますので、その状況に応じて説明します。どのぐらい人に移す可能性があるか、自分にとって、家族にとって、職場にとってどうなのかなど人によって関心のおありになる点は違うので、初診の時には十分に時間をかけてお話をすることが多いです。私自身は、病気の特徴、血液の中にはウイルスがいること、他の方に移すのはどのような場合なのかというふうなことは、時間をとって話をするようにしています。また最後に、他にお尋ねになりたいことはありませんか? と聞くようにしているつもりです。

司会

医療従事者C先生いかがでしょうか?

医療従事者C

ありがとうございます。患者さんの状態によって、多分、限られた時間の中で何を重点的に説明するかはだいぶ違ってくると思います。核酸アナログを飲むと決まった方とか、すでに飲んでらっしゃる方に対してはあまり感染性に関して重くお話はしません。通常の生活を送っていただければ周りに感染することはないですし、核酸アナログを内服するようになれば他人に感染させるリスクはさらに減少しますので、感染性に関する説明時間は軽めだと思います。今後、その薬を飲むときにどういったことに気をつける必要があるのか、定期的に検査しないと、肝臓癌ができる可能性がありますので、もしできてもそれを早く見つけることが大事というふうな話をちょっと多めにしてしまうところがあります。ただ一方で、急性肝炎で、今回初めて感染してきましたっていう方であったりとか、B型肝炎ということが検診で分かってこられたという方には、感染性に関する話をしっかり行なって、感染の原因を調べたりとか、次に家族やパートナーなど周りの方も検査したほうがいいということは結構話していますので、患者さんによって重点的に話すべきことは違うなと思います。もしよろしければ佐賀大学からも相談員が来ております。肝臓専門外来を僕以外の医師の外来も見ていますので、どういうふうに感じてみているか、ちょっと聞いていただければと思います。

司会

わかりましたではご指名ですので、どうぞよろしくお願いします。

会場参加者(Co看護師)

肝疾患コーディネーターの看護師です。医療従事者C先生が言われた通り、医師は感染に対して人にうつすといった表現はあまりされません。医師の診察が終わった後に表情が暗い方や初めて陽性と言われ日が浅い方はまだ病気の知識がないので、診察室から出られた時に何か心配事はありませんか?と声をかけています。その際に日常生活では感染のリスクがないことを説明しています。インターネットでは誤った情報が載っている場合がありますので正しい情報が載っているサイトを見てくださいと説明したことがあります。

司会

ありがとうございます。今のお話によれば、患者側はどちらかというと感染の方に重きを置いているように思います、医療者側はどちらかというと病態というか、将来肝がんになる可能性がある方に重きを置いているというような感想を抱きました。患者側として将来肝がんになるかもしれないという意識と感染症で人に移すかもしれないという意識と、当初どちらが強かったのでしょうか?

元患者A

私は感染症の方ですね。癌になる可能性があると言われたことでショックもあったけれども、それ以上に、人にうつすということが心に残りました。私がC型肝炎だと分かったのは35の時ですけど、それ以前に誰かに感染させてるかもしれないっていう可能性もすごく考えました。

元患者B

私は急性肝炎でわかったので、感染症っていう意識は後からです。急性肝炎が落ち着いて慢性肝炎になった時にどういう病態なのかって先生に伺って。重症化するっていうことの方が怖かったですね。感染のことは頭に無かった。まず、その病気の重篤さの方が怖かったんです。後になってから感染の事に気づいて、どうしようと思いました。

司会

元患者Cさんいかがですか?

元患者C

やっぱり人によって違うのだろうなと思いました。B型肝炎に感染して癌になる人もいますという話を聞いた時、私なんかがそんなになるはずはないとのほほんとしていました。それより産まれてくる子供に感染させないかそれだけが心配でした。他の方へ感染させることなどその時は考える余裕もなかったように思います。

司会

人によって違うと思うんですけど、もしくは比べることはできないのかもわからないですけども、会場に来られている皆さんが肝炎だというふうに聞いた時に、感染症の方が怖かったというか、重きがあったという方、どのくらいおられます。逆に進行して肝癌とかそっちの方が怖かったという方どれくらいおられます? そういうような状態なんですね。ありがとうございます。そうするとなかなか感染症だというところに意識がいかないのかもわからないですよね。整理しておきたいんですけども、肝炎ウイルスの感染性に関して、感染症としてどういう行為で感染するのか、しないのかに関して、医療従事者B先生の方でまとめて資料とか作られたと思いますが、簡単に説明していただければ。

医療従事者B

はい。簡単に言うと、C型肝炎ウイルスは基本的に血液以外の体液に出ることはありません。従ってご自分の血液の処理だけ気を付けていただければ、他人に感染することはないということです。B型肝炎の場合は、ウイルス量の多い場合には体液に出てくることがあります。以前はHBe抗原でウイルス量の多寡を判断していましたから、e抗原が陽性の人に関しては体液に出るというと考えるのが簡単だった時期がありますけれども、今は恐らくB型肝炎の人たちが、検査機関でもらうDNAの値が6LIU/mLより低い値であれば、体液の中にでることもまずない。したがって、C型肝炎と同じように血液だけ気をつけて頂ければいいわけです。

司会

ありがとうございます。研究班のホームページもそういうような情報が上がっていますので、また皆さん、チラシにQRコードありますので、ぜひアクセスしてみてください。次の事例をお願いします。

スピーカー紹介
八橋 弘先生
八橋 弘先生

国立病院機構長崎医療センター名誉院長/長崎県病院企業団企業長。肝臓内科が専門。「様々な生活の場における肝炎ウイルス感染者の人権への望ましい配慮に関する研究」の研究班代表。

四柳 宏先生
四柳 宏先生

東京大学医科学研究所 特任教授。元は消化器内科が専門であったが、現在は感染症という切り口から肝炎を診ている。

米澤 敦子氏 (司会)
米澤 敦子氏 (司会)

東京肝臓友の会 事務局長。東京肝臓友の会では,日々電話相談窓口を設けて患者,家族の方から電話相談を受けており、今回の事例もその相談の一部です。

中島 康之先生
中島 康之先生

全国 B 型肝炎訴訟大阪弁護団弁護士。弁護団弁護士として主に肝炎患者さんの支援などを担当。

梁井 朱美氏
梁井 朱美氏

全国 B 型肝炎訴訟九州原告団。現在慢性肝炎を患いながらも,抗ウイルス薬でウイルスをコントロールしながら活動。

及川 綾子氏
及川 綾子氏

薬害肝炎全国原告団。東京肝臓友の会で電話相談を手伝っている。

浅井 文和氏 (司会)
浅井 文和氏 (司会)

日本医学ジャーナリスト協会会長、元朝日新聞編集委員。ジャーナリストとして肝炎の記事を数多く執筆。

磯田 広史先生
磯田 広史先生

佐賀大学医学部附属病院・肝疾患センター 助教。肝臓が専門。普段は「なんでも相談窓口」を担当している相談員も兼務。

このサイトは「様々な生活の場における肝炎ウイルス感染者の人権への望ましい配慮に関する研究」の研究班により運営されています